暗号資産の板取引(取引所形式)とは?Maker/Taker手数料の仕組みと主要3社の比較

暗号資産の板取引とMaker/Taker手数料の仕組みを表現した抽象イラスト 取引所比較

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結論(要約)

暗号資産取引所の「取引所形式(板取引)」は、証券市場と同じユーザー同士の注文を突き合わせる方式で、うまく使えば手数料を実質マイナスにできます。国内ではbitbank・SBI VC Trade・コインチェックの3社とも板取引に対応しており、それぞれ手数料の設計が異なります。中でもbitbankとSBI VC Tradeは、板に注文を出して約定を待つ「メイカー(Maker)」注文に対して手数料がマイナスになる(=報酬を受け取れる)仕組みを採用しています。

証券会社で7年、株式の板を毎日見てきた立場から言うと、この「板に注文を並べて約定を待つ人が優遇される」という設計思想自体は株式市場のマーケットメイクの考え方とまったく同じです。暗号資産取引所でこれが個人にも開放されているのは、証券出身者から見てもシンプルに面白い仕組みだと感じます。

仕組み・基本知識

取引所形式(板取引)と販売所形式の違い

国内の暗号資産取引所には大きく2つの売買方式があります。

  • 取引所形式(板取引): ユーザー同士の注文を取引所がマッチングする方式。株式市場の仕組みとほぼ同じで、需給がそのまま価格に反映されるためスプレッド(買値と売値の差)が狭くなりやすい
  • 販売所形式: 取引所(運営会社)を相手に直接売買する方式。操作は簡単だが、運営会社は売却価格と購入価格を別々に提示しており、その差額(スプレッド)が実質的な手数料になる。1回の売買で負担するのは、この差の半分程度にあたる上乗せ分

「手数料が無料」と謳っている販売所でも、このスプレッドという形で実質的なコストが発生していることが多く、板取引が使える銘柄では板取引を選んだ方がコストを抑えやすいのが基本的な考え方です。今回取り上げるbitbank・SBI VC Trade・コインチェックはいずれも板取引(取引所形式)に対応しており、この3社は「板取引を使えるかどうか」ではなく「板取引の手数料設計がどう違うか」で比較するのが実態に合っています。

メイカー(Maker)とテイカー(Taker)とは

板取引には、注文の性質によって「メイカー」と「テイカー」という2つの立場があります。

  • メイカー(Maker): 板に新しく注文を並べる(=流動性を提供する)注文。指値注文を出してすぐには約定せず、板に並んで約定を待つケースがこれにあたる
  • テイカー(Taker): 既に板に並んでいる注文を約定させる(=流動性を消費する)注文。成行注文は基本的にすべてテイカー扱いになる

多くの取引所は、板に注文を並べて流動性を提供してくれるメイカーに対して手数料を優遇し、即座に約定させて流動性を消費するテイカーからは相対的に高い手数料を取る、という料金設計を採用しています。

比較・選び方

3社の板取引の手数料(主要銘柄・本記事執筆時点)を並べると、以下のようになります。

取引所メイカー手数料テイカー手数料特徴
bitbank-0.02%(報奨金)0.12%3社の中でメイカー報酬の料率が最も高い
SBI VC Trade-0.01%(報奨金)0.05%メイカーも報奨金型。テイカー手数料は3社の中で最も低いが、対応銘柄はBTC・ETH・XRP等8銘柄に限られる
コインチェック0%(無料、報奨金なし)0〜0.1%(銘柄による)メイカー手数料はかからないが報奨金はない。取引停止・再開時の板寄せでは別途手数料がかかる場合がある

こうして並べると、「板取引ならどこでも同じ」ではなく、自分の取引スタイルによって有利さが変わることが分かります。

  • 指値注文を板に並べて約定を待つスタイルが多いなら、メイカー報酬の料率が高いbitbankの恩恵が大きくなります
  • 成行注文(テイカー)中心で素早く売買したいなら、テイカー手数料が3社中最も低いSBI VC Tradeが有利になり得ますが、対応銘柄が8銘柄と限られるため、取引したい銘柄が含まれているか事前の確認が必須です
  • とにかく手数料をシンプルに抑えたい・メイカー注文がほとんどという場合は、無料のコインチェックも選択肢に入ります

「板取引に強い1社」を決め打ちするのではなく、自分がメイカー中心かテイカー中心かで使い分ける、という考え方が実態に近いです。

取扱銘柄数という視点も忘れずに

手数料だけでなく、そもそも板取引したい銘柄が上場しているかどうかも重要な選定軸です。ここで注意したいのは、「取扱銘柄数」全体(販売所での取扱いも含む)と「板取引(取引所形式)で対応している銘柄数」は別物だという点です。板取引に絞った銘柄数を各社公式情報で確認すると、bitbankが44銘柄、コインチェックが26銘柄であるのに対し、SBI VC Tradeは8銘柄(BTC・ETH・XRP・BCH・LINK・LTC・DOT・NIDT)にとどまります。SBI VC Tradeは総取扱銘柄数自体は40銘柄超と多いものの、その大半は板取引に対応しない販売所限定の銘柄です。3社の中では、板取引できる銘柄の幅という点でbitbankが圧倒的に広く、次いでコインチェック、SBI VC Tradeは主要銘柄に絞った少数対応という位置づけになります。

Solana(SOL)のように比較的新しい銘柄でも、bitbankは2024年11月から取扱いを開始しており、板取引(取引所形式)でも売買できます(実際にSOLをbitbank・SBI VC Tradeから出庫してステーキングした記録は「Solanaをステーキングしてみた|Phantomで分かった手数料の仕組みと落とし穴」にまとめていますが、この体験はSBI VC Trade側の板取引経由ではありません)。手数料の有利さだけでなく、「そもそも板取引できる銘柄の幅」も、取引所を選ぶ際にあわせて確認しておきたいポイントです。

金融庁もこの構造に触れている(2026年9月追記)

金融庁は2026年7月15日、日本暗号資産等取引業協会との意見交換会で、この構造に触れています。公表資料には、金融審議会のワーキング・グループ報告書において「「販売所」と「取引所」の2種類のサービスを提供する事業者において、「取引所」よりも収益性の高い「販売所」での取引を誘導しているのではないかとの懸念」が指摘されている、と記載されています。

背景にあるのは2024年11月に施行された金融サービス提供法の改正です。暗号資産交換業者を含む全金融事業者等に「顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して、誠実かつ公正に業務を遂行する義務」が導入されました。金融庁は、販売所と取引所のUIにおける導線をはじめ、何が顧客本位であるかについて協会と対話していくとしています。

現時点で規制が変わったわけではなく、対話の方針が示された段階です。

板取引(取引所形式)の仕組みを理解しておく実利は、ここにあります。販売所しか使っていないと、自分が払っているスプレッドが見えません。板を見て指値を置けるようになると、コストが手数料表の数字として現れるようになります。

出典: 金融庁「業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点」[2026年7月15日開催 日本暗号資産等取引業協会](PDF)

リスク・注意点

  • bitbankのメイカーマイナス手数料は、公式に「キャンペーン」という位置づけで案内されています。恒久的に続く保証はなく、他社の料率も含めて将来変わる可能性があります。取引前に必ず各社公式サイトで最新の料率を確認してください
  • 指値注文を出しても、相場が急変すると板に並ぶ前に約定してテイカー扱いになることがあります。特にSpot price付近の指値では、メイカー/テイカーが注文時点では確定しない点に注意が必要です
  • メイカー報酬は取引量に比例するため、取引量が少ないと報酬額自体も小さくなります。板取引の恩恵を大きく受けられるのは、ある程度の頻度・金額で取引するアクティブユーザーです
  • 板が薄い(注文が少ない)銘柄では、指値が約定しにくかったり、実質的なスプレッドが広がったりすることがあります。主要銘柄以外では板の厚みも確認しておくと安心です
  • 暗号資産は価格の変動が大きく、購入時の価格を下回って損失が生じる可能性があります。本記事は特定の銘柄やサービスへの投資を推奨するものではありません。余裕資金の範囲で、リスクを理解したうえでご判断ください

まとめ

板取引とメイカー/テイカーという概念は、証券市場のマーケットメイクの仕組みと本質的に同じものです。「取引所形式か販売所形式か」をまず理解した上で、板取引に対応する取引所の中でも、自分がメイカー中心かテイカー中心かによって有利な取引所は変わってきます。

各取引所の口座開設の実際の流れは「元証券マンが暗号資産取引所の口座開設を実際に比較してみた」を、取引所ごとの手数料・特徴の全体比較は「国内暗号資産取引所を徹底比較|手数料・取扱銘柄・使いやすさ」もあわせてご覧ください。

3社の中で現在提携しているbitbankの口座開設はこちらから → 【PR】bitbank(ビットバンク)

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SBI VC Tradeは公式サイトからお申し込みいただけます。

参考情報

※本記事内の手数料・取扱銘柄数等の数値は執筆時点(2026年8月)の調査に基づく目安です。実際の手数料・取扱銘柄は変更される場合があるため、取引前に必ず各社公式サイトでご確認ください。

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