DeFiの歴史を4段階で解説|黎明期・狂乱期・淘汰期・成熟期でなぜ変わったのか

DeFi利回り運用

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結論(要約)

DeFi(分散型金融)の歴史は、単なる「バブルと崩壊の繰り返し」ではなく、「信用のレイヤー分担」が進化してきたプロセスとして読み解くことができます。2017年の黎明期から現在まで、大きく黎明期・狂乱期・淘汰期・成熟期の4段階を経てきました。

先日、Kudasai Cryptの「DeFiからオンチェーン金融へ」というセミナーに参加し、この歴史を体系的に整理する機会がありました。証券会社で7年、個人のお客様向けに資産運用をサポートしてきた立場から見ると、「コードが全てを決める」というWeb3の思想と、過去の信頼の積み上げを土台にする伝統的金融の考え方が、成熟期に入って初めて交わり始めているというのが率直な感想です。

仕組み・基本知識(DeFiの4段階)

1. 黎明期(2017-2019):金融プリミティブの誕生

初期のDEX(EtherDelta等)はガス代・遅延・流動性不足という壁に直面していましたが、UniswapがAMM(自動マーケットメイカー、x×y=kという数式で価格を決める仕組み)を実装したことで、「誰でもプールに資産を置くだけでマーケットメイカーになれる」という流動性提供の民主化が実現しました。

もう一つの柱が、MakerDAO・Compound・Aaveなどによる過剰担保型レンディングです。信用審査なしに、担保比率と自動清算ロジックだけで融資・レバレッジが成立する、ノンカストディアル(資産を預ける相手がいない)な金融基盤がここで確立されました。

2. 狂乱期(2020-2021):イールドファーミングの狂騒

2020年6月15日、Compoundが独自ガバナンストークン(COMP)を配布する「流動性マイニング」を開始したことが、いわゆる「DeFi Summer」の号砲となりました。異なるプロトコルをAPIのように繋ぎ合わせる「マネーレゴ」により、金融機能が爆発的なスピードで合成されていった時期でもあります。

この時期を象徴する事件が、SushiSwapによる「ヴァンパイア・アタック」です。

  • 2020年8月28日:SushiSwapがローンチ。Uniswapより高い報酬(SUSHIトークン、初期は年率1000%超)を提示し、わずか数時間で1.5億ドル超の資金を集める
  • 2020年9月9日:MasterChefコントラクトが起動し、Uniswapの流動性プールを丸ごと自陣へ移す「ヴァンパイア・アタック」を実行。最終的にUniswapの流動性の約55%(8.1億ドル相当)がSushiSwapへ移った
  • 2020年9月16日:対抗上、Uniswapが過去の利用者にUNIトークンを遡及エアドロップ

もう一つの象徴的事件がYAM Finance事件(2020年8月)です。ローンチからわずか36時間で約600億円相当の資金を集めたにもかかわらず、供給量を自動調整する「リベース」機能のたった1行のコード計算ミスにより、ガバナンス機能が永久に停止し価格も暴落しました。「未監査コードの限界」と「監査(Audit)の必須化」を業界に突きつけた出来事です。

3. 淘汰・再評価期(2022-2023):システミックリスクの顕在化

2022年5月のTerra(LUNA/UST)ショックは、無担保のアルゴリズム型ステーブルコインが取り付け騒ぎからデススパイラルに陥り、数兆円規模の資産が一瞬で消失した事件でした。ここから3AC・Celsius・FTXの破綻へと連鎖倒産が続き、「裏付けのない利回り・トークン設計」が市場から排除される契機になりました。同時に、日本の改正資金決済法(ステーブルコインの信託・分別管理の厳格化)やEUのMiCAなど、機関投資家が参入できる法的レールの整備も各国で進みました。

4. 成熟・実需期(2024-現在):オンチェーン金融への昇華

投機的な二重カウントに陥りがちな「TVL(預入資産総額)至上主義」から、実体経済のキャッシュフローを裏付けとするReal Yield(実質利回り)へのシフトが進んでいます。トークン化された米国短期国債(BlackRockのBUIDL等)やプライベートクレジットといったRWA(現実資産)が兆円規模でオンチェーンに流入し、日銀による国債・株式の即時決済(DvP決済)の検討やメガバンクのレポ取引実証など、国の基幹決済インフラへの「逆輸入」も進行しています。

各時代を貫くテーマ:流動性トークンという発明の光と影

セミナーを通じて個人的に一番引っかかったのは、「流動性トークンの発行」という発明が、その後の業界全体の設計思想にどう影響したかという点です。

前述のSushiSwap・Uniswapの攻防に象徴されるように、「トークンを発行して流動性を奪い合う」という手法は、預けた資産の流動性を確保しながら別のプロトコルでも再利用できるという意味で、資本効率を高める発明ではありました。マネーレゴによるコンポーザビリティ(構成可能性)は、許可不要で既存の金融機能を自由に組み上げられる圧倒的な開発速度・オープンイノベーションを生み出しました。

一方でこれは、コンポーザビリティの「影」の側面とも表裏一体です。依存関係でつながったプロトコル群は、たった1箇所のオラクル障害やコードのバグ、清算スパイラルが、エコシステム全体へ一瞬で波及する連鎖リスクを常に抱えています。個人的な仮説としては、トークン発行によって本来は機会費用やリスクという形で発生するはずの「流動性供給のコスト」が見えにくくなり、結果としてトークンの過剰供給・インフレによる価値毀損という副作用を招いたのではないかと考えています。マクロ経済学でいう「通貨供給量とインフレの関係」が、DeFiのプロトコルレベルでミニチュア再現されているようにも見えます。

この構造が今後、トークノミクス設計の改善やReal Yieldへのシフトの中で自然に是正されていくのか、それともコンポーザビリティを維持する以上避けられないDeFiの前提として引き継がれていくのか、引き続き注視したいテーマです。

リスク・注意点

  • 高APY(利回り)は、リスクリターンの関係が崩れているサインとして警戒すべきというのが、今回のセミナーを通じて改めて感じたことです。狂乱期に見られたような二桁・三桁%(時に年率1000%超)の表示APYの多くはトークン報酬に依存した一時的なものであり、持続可能な利回りとは性質が異なります(仕組みの詳細は「DeFiのAPY・利回りの仕組みとリスク」で解説しています)
  • YAM Finance事件が示すように、監査を受けていないコードには、集まった資金の規模に関わらず致命的なバグが潜んでいる可能性があります。ローンチ直後に急成長したプロトコルほど、コードの検証がその成長速度に追いついていないリスクがあります
  • Terra/USTのようなアルゴリズム型ステーブルコインの設計は、平時には革新的に見えても、市場が急変した局面で連鎖的に崩壊するシステミックリスクを内包していました。「仕組みが複雑で理解しきれないプロダクト」には、その複雑さ自体をリスクとして織り込む視点が必要です
  • コンポーザビリティ(構成可能性)は開発速度という利点の裏で、1つのプロトコルの障害が別のプロトコルへ連鎖する構造的な脆さも生みます。利回りの高さだけでなく、そのプロトコルが「何に依存しているか」を意識しておくことをおすすめします

まとめ

DeFiの歴史を4段階で振り返ると、「企業の信用からコードの信用へ」という単純な移行が起きたわけではなく、信用のハイブリッド化が進んできたことが分かります。執行・清算のレイヤーはブロックチェーンが24時間即時・自動で担保し(コードの信頼)、原資産・権利のレイヤーは伝統的金融・法制度が担保する(制度・企業の信頼)という役割分担です。今回のセミナーで証券会社のDeFi担当者の話を聞いて感じたのは、証券会社のように過去の信頼の積み上げがある組織こそ、オンチェーン金融に取り組む意義が大きいということです。証券出身者としても強く共感するところでした。

同時に、DAOという「合意形成をコードとコミュニティに委ねる」発想と、消費者が金融サービスに求める「信頼」との間でどうバランスを取るかは、これからのDeFiにとって重要な論点です。ラウンドテーブルで話題になった、ノード自体を制限しがちだが流動性がサイロ化しやすい「パーミッション型ブロックチェーン」と、パブリックチェーンの巨大な流動性・ツールを使いながらスマートコントラクト側でDID・KYCによって参加者を制御する「スマートコントラクトによる制御」という2つのアプローチの対比は、この「信頼をどこに置くか」という問いに対する異なる答え方として、非常に示唆に富むものでした。

このDeFi史というテーマでは、今回取り上げた「流動性トークンの発行」という論点に加えて、YAM Finance事件やTerraショックといった個別の事件、さらにAIエージェントがオンチェーン金融の運用判断を担う「DeFAI」のようなフロンティアについても、今後1本ずつ深掘りしていく予定です。

DeFiのAPY・利回りの仕組みについては「DeFiのAPY・利回りの仕組みとリスク」を、DeFi運用の確定申告については「元証券マンが見るDeFiの確定申告|利回り運用の税金計算でつまずきやすい点」もあわせてご覧ください。

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参考情報

※本記事の歴史的経緯・数値は執筆時点(2026年8月)の公開情報に基づく整理であり、個々の事件の詳細は各社公式の事後検証レポート等もあわせてご確認ください。

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