元証券マンが見るRWAのカウンターパーティリスク|発行体は信頼できるのか

RWA

本記事はPRを含みます

結論(要約)

RWA(現実資産のトークン化)に投資する際、スマートコントラクトのバグや取引所のハッキングといった「暗号資産的なリスク」ばかりが注目されがちですが、実際にはもっと古典的なカウンターパーティリスク(発行体・管理者が約束を果たせなくなるリスク)の方が本質的に重要です。

たとえばBlackRockのBUIDLファンドは、大手銀行のBNYメロンがカストディアン(資産の保管・管理)を務め、Securitizeが移管代理人(トークンの発行・償還・分配の記録)として役割を分担する体制になっています。証券会社でM&A業務にも携わってきた経験から見ると、RWAは「ブロックチェーン上のトークン」という技術的な皮を被っていても、中身は「誰が何を保証しているか」を1枚ずつ確認する、伝統的な与信審査そのものです。

仕組み・基本知識

カウンターパーティリスクとは

カウンターパーティリスクとは、取引の相手方(この場合は発行体やその関係者)が契約上の義務を履行できなくなるリスクのことです。伝統的な金融の世界では、社債の発行体が破綻すれば元本が返ってこないのと同じ構造の話です。RWAトークンも、裏付け資産(国債・不動産・金など)そのものではなく、「発行体がその資産を適切に保管・運用し、償還請求に応じる」という約束の上に成り立っています。

RWAの当事者構造を分解する

RWAは1つの企業だけで完結しているとは限らず、複数の当事者が役割分担していることがほとんどです。主な役割は次の3つです。

  • 発行体(Issuer): トークンを発行し、裏付け資産の運用方針を決める主体
  • カストディアン: 裏付け資産(現金・国債・金地金など)を実際に保管する主体
  • 移管代理人(Transfer Agent): トークンの発行・償還・保有者情報の記録を管理する主体

これらが分業している場合、1社に問題が起きても他の主体がチェック機能を果たせる可能性がある一方、当事者が多いほど「誰が最終的に責任を負うのか」が分かりにくくなる側面もあります。

実例で比較する

  • BUIDL(BlackRock): BlackRockが運用会社、BNYメロンがカストディアン・管理者、Securitizeが移管代理人兼トークン化プラットフォームという三層構造。申し込み・償還・分配の報告はSecuritizeが担う
  • ジパングコイン(ZPG): 三井物産デジタルコモディティーズが発行体を兼ね、金地金の保管も自社体制で行う(体験記「GMOコインでOPメインネット版ジパングコイン(ZPG)を買ってみた」参照)。発行体と保管者が同一という、BUIDLとは異なる集中型の構造
  • 国内の不動産ST: Progmatのデジタル資産基盤を使い、個別の信託受益権発行体(SPCなど)が裏付け資産を保有する構造が一般的(「RWA(現実資産のトークン化)とは?」参照)

比較・選び方

RWAタイプ 発行体 資産の保管を担う主体 トークンの発行・移管を担う主体
国債トークン(BUIDL) BlackRock BNYメロン(大手銀行) Securitize
ゴールドトークン(ZPG) 三井物産デジタルコモディティーズ 発行体自身 発行体自身(取引所経由で流通)
不動産ST(国内) 個別のSPC等 信託銀行等 Progmat基盤

発行体と保管者が分離しているか、同一企業が兼ねているかは、チェック機能の有無に直結する重要な違いです。「どの会社が何を保証しているか」を購入前に1段階ずつ確認する習慣をつけると、表面的な利回りやブランド名だけで判断するリスクを減らせます。

リスク・注意点

  • 「ブロックチェーン上で管理されている」ことと「安全であること」は別問題です。ブロックチェーンが保証するのはトークンの移転記録が改ざんされていないことだけで、裏付け資産が現実に存在し、適切に保管されているかどうかは、オフチェーンの情報開示や第三者監査に依存します
  • 発行体の分別管理(自己勘定の資産と顧客の裏付け資産を分けて管理しているか)や、監査報告書の開示頻度を確認することが重要です
  • 発行体と保管者が同一企業の場合(ZPGのような形態)、チェック機能が働きにくい構造になりやすい一方、関係者が少ないぶん責任の所在は明確という側面もあります。どちらが良い・悪いという単純な話ではなく、構造の違いとして理解しておく必要があります
  • 海外発行体の場合、発行国の規制の枠組みが日本の投資家保護に及ばない可能性があります。詳しくは「元証券マンが見るRWAの法規制|金融商品としてどう扱われるのか」で整理した通りです
  • 伝統的なポートフォリオ管理の基本と同様、1つの発行体・1つのRWA商品に資産を集中させすぎないという考え方は、RWAにもそのまま当てはまります

まとめ

RWAのカウンターパーティリスクは、暗号資産特有の新しいリスクというより、伝統的な金融で長年扱われてきた「発行体の信用リスク」がそのまま形を変えたものです。ブロックチェーン技術そのものの新しさに目を奪われず、「発行体は誰か」「保管者は誰か」「情報開示はどこまで透明か」という古典的な与信審査の視点を持つことが、結局はRWA投資で一番地味だが効果的なリスク管理だと感じています。

RWAの基本的な仕組みについては「RWA(現実資産のトークン化)とは?仕組みと投資対象をわかりやすく解説」を、規制面の違いについては「元証券マンが見るRWAの法規制|金融商品としてどう扱われるのか」を、証券化・セキュリティトークンとの関係整理は「元証券マンが見るRWAと証券化の違い|セキュリティトークンとの境界線はどこにあるのか」を、実際にゴールド連動のRWAトークンを購入した記録は「GMOコインでOPメインネット版ジパングコイン(ZPG)を買ってみた|国内初のL2上のゴールドRWA」もあわせてご覧ください。

参考情報

コメント

タイトルとURLをコピーしました